小さな土地の2階リビングの家

札幌市の山々が垣間見れる住宅街、間口7.2m奥行17mの細長形状で家々が隣接する37坪の小さな土地に、アウトドアで食事も楽しみたいというご希望をもったご家族の住まいを設計監理しました。
2階にリビングを設けた先にベランダを隣接させ、室内外を共に楽しもうという案へ。
2階ベランダの下に重ねるように玄関ポーチを設け、コンパクトな敷地に建築面積を抑える工夫をしました。

外壁はすべて北海道産トドマツ無垢板。
ウッドロングエコという塗料を使っています。
ウッドロングエコは樹皮やハーブなどの天然成分からできた木材防護保持剤で経年変化でシルバーグレー色へと全体的に色変わりしていく塗料。
北海道産トドマツは無塗装の状態では淡い白っぽい木肌ですが、ウッドロングエコを塗装した工事当初から工事完成するまでの5か月間で、この写真位の色へすでに変化していきました。
将来外壁の無垢板がシルバーグレー色へと全体的に色変わりしていくことに合わせて、サッシや板金関係もシルバー系の色を選択。
建て主さんは2024年の春に植栽も行っていけたらとご希望されています。
今後十数年経った際には、落ち着いた風合いへ変化した外壁の前にきっと生き生きとした緑が映えていることと思います。

玄関ポーチは3畳ほどのスペース。
自転車を止め入れたり、濡れた外道具を置いたり、置き配等など、多目的に重宝できる広さ。
玄関ポーチの床は、2024年の春に江別産レンガで建て主さんのセルフ工事で敷き詰める予定です。

玄関ドアは北海道の工場で製造している木製断熱ドアを採用。
断熱性が高いことも選定している理由ですが、何より太陽の光や雨風雪を、暮らし手と共に「ただいま」「おかえり」を同じ年月積み重ねて現れる無垢板の木製断熱ドアの表情、風合いは代えがたいものがあります。

玄関から奥に伸びる廊下、階段。
奥行の長い土地形状にあわせて素直に動線も奥に進む形状をしています。
一階には書斎や寝室、WIC、洗面脱衣等の水回りといった小さな部屋を詰め込んでいますが、玄関から入ったときにすっと奥へと伸びやかに感じられるよう、ドア周りや床回り、天井について、見た様子が線や凸凹をなるべく少なくするよう詳細を積み重ねて設計してみています。

床には北海道産カラマツの無垢フローリング、階段の段板は北海道産カラマツの三層クロスボード(三層パネル)を使用。
同じ樹種で統一しながら、段板は同厚の無垢材を使うよりも反りを抑えられ、コストも抑えられる三層クロスボードを採用しました。
三層クロスボードは単板厚み10mm程あるものが3枚重ねられ作れているため、表面をうずくり仕上げにすることも可能。
うずくり仕上げで滑りにくくかつ質感を感じられる仕上げとしました。

手摺は鉄の丸棒を黒皮素地で。丸い断面形状は大人も子供も握りやすいのが良いところ。
階段横の廊下幅が800mm弱と幅狭のため、なるべくすっきりとしたフォルムで圧迫感なく。
細い形状ながらも鉄であることで堅牢で剛性もよし。黒色で空間も引き締まる印象がします。

階段は年をとっても足に負担が少ないように一段あたりの高さを抑え、緩めに。
2階リビングだからこそ気を遣うところです。
コンパクトな家ですが、階段の上り下りやすさのために必要な広さは当初から削らずに大事に考え計画してきました。

洗面台はタモ集成板にボウル広さのある実験用流しをはめ込み利用。
実験用流しは有効幅680mm、深さ200mmとしっかり広さがあるので、普段の手洗いや洗濯の予洗い時に木の天板にかかることも僅かと思います。

引き出しは計画せず、建て主さんでお好きな収納箱でアレンジするスタイルを採りました。
洗面台横には洗濯機スペースを設けていますが、その上にも棚を設置し、収納量を確保。

鏡はあえて枠無しにし、極シンプル、プレーンな印象の洗面。
鏡に映る廊下の左官塗り壁のテクスチャーも感じ良く映ります。

照明は建て主さんのご希望で温白色のLED電球に。普段の身支度に電球特有の色かぶりが少ないようにと選定されていました。

洗面脱衣室内の浴室の扉横には暖房配管3本を表しで。
この「小さな土地の2階リビングの家」は暖房はパネルヒーターによるセントラルヒーティングにしているため、2階のパネルヒーター用の暖房配管が必ず1階のどこかにスペースが必要なわけですが、あえて洗面脱衣室で露出にし、ここからの放熱も期待しています。
物干しポールを近くに設けていますから、冬に着る機会の多い少し厚手の洗濯物も乾きやすくなります。

洗面脱衣室に隣接して設けたWIC。広さは2畳半ほどです。
隣接しているので洗濯後の片づけや入浴時に動線が短くすみ、何かと使い勝手が良いと思います。
天井にみえる合板は2階の床合板。ここで天井高さ2.6mほど。
2階設備配管に必要な天井懐は最小範囲にまとめ、枕棚の上はスペースを大きくとれるようにしました。
枕棚の上には軽くて大きなもの、例えば収納袋にまとめられた季節のお布団の置き場等に便利。

1階の寝室は、2.6m×2.6mの広さで4.5畳。
そのため家族分のベッドを置くと壁が近いため、引き戸は戸袋(壁の中に戸が入る)形式に。
既製サイズの建具ではなく、このお家にあわせて造作した木製引き戸ですが、壁はそのままでメンテナンス時も扉を全外しできるように納めを考えています。
引き戸の取手は手あたりの良い無垢材の引手。面全体はシナの木の面材でつくり素朴な印象の扉にしました。
一階の寝室や書斎スペースからは2階へ上がる階段がすぐ近くに見える配置をとりました。

竣工年2023年
建築場所北海道札幌市
敷地面積123.98㎡(37.50坪)
延床面積87.79㎡(26.55坪)※玄関ポーチ含む
工法・構造木造在来工法(柱・梁の一部に北海道産カラマツ材使用)
外装材北海道産トドマツ無垢板貼り ウッドロングエコ塗装仕上
内装材床:北海道産カラマツ無垢板フローリング貼り オイルステイン塗装仕上
壁:北海道産ほたて漆喰仕上、構造用合板素地仕上
天井:北海道産ほたて漆喰仕上、北海道産トドマツ無垢板貼り 無塗装仕上、構造用合板素地仕上げ
家具キッチン:木製オリジナル造作、天板ステンレスヘアライン仕上
洗面台:木製オリジナル造作、天板タモ集成材 オイルステイン仕上
建具玄関ドア:木製断熱ドア オイルステイン塗装仕上
窓:樹脂サッシ
内部建具:シナ面材による造作建具 オイルステイン塗装仕上 
暖房設備ガスエコジョーズ、パネルヒーターによるセントラルヒーティング
換気設備第三種換気
断熱仕様屋根断熱:吹込み用ロックウール65K相当 330mm
壁断熱:高性能GW16K210mm(付加断熱含む)
基礎断熱:押出法ポリスチレンフォーム保温板(3種B)100mm
給湯設備ガスエコジョーズ
Ua値・省エネ性0.28W/㎥・K 、ZEH oriented 取得
設計期間2022年11月~2023年4月(約5か月間)
工事期間2023年4月~2023年9月(約5か月間)
施工会社有限会社徹庚ハウジング (https://toko-housing.jp/